『踊る大捜査線 THE MOVIE3』を観返した

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BSフジで毎週日曜日に踊る大捜査線の劇場版とスピンオフ作品が放送されていて、昨日は『THE MOVIE 3』だったんだけど、困ったことにとても楽しかった。

なぜ困るのかといえば、ぶっちゃけ脚本が良くないから。警察署の引っ越し、セキュリティとその乗っ取り、非正規雇用、洗脳、健康診断のすべてを適当に描写している。リアリティベースではない。別に現実じゃないし、フィクションだし、おまけにコメディ要素が多いから別にいいんじゃね?と思わなくもないけど、でもどう考えても限度を超えてる。盛り込みすぎ。それが理由で描けていない部分も結構ある。

ただ、それでもやっぱり自分はこの作品が好きなのだ。どう考えても脚本は破綻しているし、演出も映像もやりすぎている。だけどそれでもやっぱりこの映画は愛おしい。それはあの世界が続いていること、キャラクターを存続してくれたことなど様々な理由があるけど、個人的には成功しか許されないプレッシャーにさらされながらそれでも本広克行の遊び心(と病み)が随所に散りばめられているからだ。一度で消化しきれない情報が画面に散りばめられているから9年経っても発見がある。真下が署長に就任する時の「おいーっす!」がいかりや長介リスペクトだと本当にいまさら気づいて泣きそうになった。すみれの「死ねば良かったのに」の真意もまだわからなくてはらはらする。

こんなTVシリーズ、もう作れないと思うけど、やっぱりまたやってほしい。次の放送日は忙しいので近い内に『FINAL』も自主的に見るつもりです。

 

ぴっち(@pitti2210

 

ニコラス・ウィンディング・レフン『TOO OLD TO DIE YOUNG』第1話

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Amazon Primeで第1話を観た。まだ全10話13時間の中の1話なのでまだ感想は固まっていないが、僕が今までに観たニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライブ』や『オンリー・ゴッド』と大きく変わることはない。何が起こるかわからないし、でも血は流れるし、総じてテンポがゆったりとしている。そして何よりも映像がきれい。

正直、退屈の一言で片付けてしまいたい自分もいる。だけど、今、1話を観て二晩経ったのだけど、おそらく全部観てしまうのだろう。どんなに時間がかかっても。とにかくゆったりとしたテンポで、だけど異常なほど緊張感があって、そしてこの若き悪徳警察官の運命を見届けたいという気持ちが沸々と湧いてきている。北野武作品をさらにテンポを下げて、なおかつそれ以上に静かな暴力に満ちた世界が、どのような帰結を迎えるのか。正直、頭ではどうでも良いと思ってるのだが、本能がこの物語の続きを求めているみたいで今すごくしんどい。時間がほしい。

 

ぴっち(@pitti2210

『アベンジャーズ エンドゲーム』を観た

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ここは「ドラマだいすきクラブ」なので基本的にはドラマのことをベースにやるつもりだけど、映画のことも書きたいので書きます。 そういうわけで「アベンジャーズ エンドゲーム」を観てきました。ネタバレはしないけど気になる人は鑑賞後に読んでいただけるとありがたいです。 

 

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ゾンビドラマなのにやさしい『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』

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NHKがゾンビドラマを作るということで真っ先に想像したのが「カメラを止めるな!」ブームへの便乗だけど、ブームから一年も経っていないのでどこまで影響しているかはわからないし、そもそも内容は全然違う。だから結局のところ「ウォーキング・デッド」への日本からの回答なのかもしれないけど、「これ、回答になっているのか?」という疑問が頭をよぎる。

一体これは何なのか?その疑問だけで全8回完走してしまった。ざっくりした感想だけど、とてもやさしいゾンビドラマだったと思う。それは結局のところ、争いがなかったからだ。このドラマは人間がゾンビを必要以上に攻撃する場面はなかったし、ゾンビが人間を食い尽くすこともなかった(齧りはする)。人間が人間を攻撃する場面もなかった。

それはタイトルの「人生見つめ直した」の部分が大きかったからだ。主人公は夫と別居状態にありながら離婚届を出さない。でも愛情もない。一方でその夫は主人公の親友と不倫している。その親友は地元のあまり良いとは言えない職場で働いている。もうひとりの親友は妊娠できない悩みを持ちながら愛情表現が下手なバツイチの強面の男と付き合っていて、その男には娘が居る。そしてその娘は一緒に住む母親に疎まれている。主人公の妹は一刻も早く地元を出て東京に行きたがっている。でも父親はリストラされてコンビニで働き、娘の大学進学に後ろ向きだったりする……とまあ、大丈夫かと言いたくなるくらいみんな悩みを抱えている。そしてゾンビが登場することで平穏(?)な日常は終わりを告げ、みんなが人生を見つめ直すことになる。

なぜ自分がこのドラマを完走できたのかを考え続けていたのだが、やはり「どうなるのか」が気になったからだと思う。つまりこのドラマの製作者がこの奇想天外で摩訶不思議な世界に対してどう落とし前を付けるのか。その緊張を最後まで持続し続けたのは見事だった。

そしてゾンビ作品でありながらゾンビのグロテスクさが薄れていること、人間の暴力性をテーマとして掲げないことは他作品と差別化を図る上でもよくできていたと思う。日本が舞台だけあってみんなが銃を持っているわけでもないし(でも一応銃はある)、ゾンビもそこまで暴力的ではないし、その理由が一応説明されているのも良かった。暴力的ではないゾンビが現れる世界を彩る小山絵里奈の音楽も抜群だった。

ただ、視聴者を引き付けるだけの謎は用意されているものの、それに見合うような解答が用意されていたとは個人的には思えなかった。でもまあ、物語に対して納得できる解答を用意することが必ずしも正しいわけではなく、むしろ観ている人を結末まで連れて行くことのほうが大事なので、その辺りは観た人が判断すればいい。NHKがゾンビドラマをやる。その向う見ずな挑戦を讃えたい。

 

ぴっち(@pitti2210

多分オンライン上のほうが楽しい『ゆうべはお楽しみでしたね』

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個人的にはもともと恋愛ドラマが苦手ではあったけど、原作の恋愛未満の同居生活から付き合い出すまでの流れがゆるやかで心地よくて、ドラマ版ではそれがうまく再現できているとは思っていた。4話までは。

ドラクエ10の映像も吹替もとても丁寧に作られていて、なおかつ現実世界にまで侵入(?)するスライムのCGのミスマッチ具合が良くて、これは丁寧に作られているなあと感心していたのね。また4話における、些細だけど人を喜ばせる優しさに満ちたエピソードは観ていて本当に幸せで、それが芯にあったからこそ宮野真守筧美和子の不自然な演技が良いスパイスになっていたと思っていたの。4話までは。

そうなんだよね。実はこのドラマ、全6話。

そういうわけで5話から急展開になりました。もちろん原作と同じく主人公のパウさんに転勤話が持ち上がるのは想定内だったけど、制作陣が何を血迷ったのか、ヒロインのゴローさんの元カレを登場させ、彼氏が主人公に復縁の協力を要請し、パウさんが苦しみながらそれに応じるという始末。そして原作とは異なる形でパウさんの告白をピークに持っていこうとする展開。

どうなんだろうこれは?確かにこのドラマは原作以上のドラクエ感はある。彼氏の復縁は失敗し、パウさんの協力がゴローさんに露見したことで嫌われ、なおかつ出ていかれ、パウさんは原作以上のどん底に突き落とされた。でもその後に職場の仲間やその元カレ、そしてオンライン上の仲間に叱咤されて立ち上がるパウさんの姿はいかにもドラクエ的ではあった。絶望的な状況に立ち向かう姿は5とか11っぽさがあった。

でもこれでいいのだろうか?とも思う。確かにこのドラマ版がやっていることは30分ドラマ6本という尺に合わせた再構成で、なおかつ独自の道を突き進んでいて、それはある意味原作が大切にしていたゆるやかな愛の成就とは少し異なった、ドラマチックな結末を盛り込んでいる。

原作が成長とともに自分の気持ちに素直になって告白する展開だとしたら、ドラマは仲間に背中を押される形でゴローさんに告白に展開になっている。もちろんそこには多少の成長の跡はあるが、むしろ恋愛の起伏から一定の距離を置いた上でゆるやかな恋の成就を遂げることが「ゆうべはお楽しみでしたね」の大きな魅力だったのではないか。それが4話までは見事に再現されていたのだけど、最後の2話でドラマのテンプレに乗っかかってしまったように思えなくもない。

ただそれが悪いこと!と断じるのもまた難しくて、むしろこの改変を行ったからこそこの作品の魅力をうまく提示できた気もしていて、いまだにどちらが正しかったのか考えている。

とまあいろいろ書いたけど楽しかったです。CM含めて力作だったと思います。ドラクエ10やりたい。

 

ぴっち(@pitti2210